人の世界
昔
「女性は子供を生産する機械だ」と発言した人がいた。
猛烈な怒りを感じた。
「あなたも機械から生産された部品なのですか?」
「自分のお母さんや、おばぁちゃんを機械と呼ぶのですか?」
と聞き返したくなった。
先日
「私は子供を生産する機械だから」と自称する人に会った。
猛烈な寂しさを感じた。
「生身の人間が言っていい言葉じゃない。」
「どんな事があって、自分を機械だと認識してるのだろう」
そう聞き返したくても言えなかった。
割り切って、笑顔で語っていることが、余計に寂しかった。
何が積み重なって、その答えに至ったのだろう。
心を静かにして、その人の世界のすき間に少し同調してみた。
最初に感じたのは「痛み」
そして「空虚感」
幸せや、優しさ、暖かさという光など届かない
凍てつくほど寒々しい荒野。
立ち枯れて、朽ち果てても、土に還る事さえ許されない、一本の樹。
だが、救いすら求めていない。
それに触れた事が無いのだから・・・
暖かさなど初めから解らない。
「私に出来る事なんて何もない。」
「この人の世界に侵される前に、ここを離れよう。」
そう思い、ふわっとフェードアウトしました。
違う、何もかもが根底から違いすぎる。
触れることのできない世界線の人に出会った。
私に出来る事は何もない。
私の持っているものは何一つとして届かない。
「暖かい出会いがありますように」
そう祈るだけ。
自分の世界に暖かい風が吹き込むだけで、人は変われる。
そう私は思っている。
その役割が今回、私ではなかっただけで。
私はその世界から吹き込んできた冷え切った風に少し驚きながら
冷え切った空気と暖かい空気を一緒に吸い込んで深呼吸をして
「自分の世界を大切にしよう、もっと綺麗なものにしていこう」
「そしてほんのちょこっとだけ力強く、広げていこう」
と思ったのでした。
「人はありのままでいるだけで、周りに何かを与える事ができるのだから」
と私は信じているから。