花チャンネル

日々、私の中から生まれる詩、言葉を綴っています。

暖炉

わたしは、彼女と2人暮らし。




わたしの居場所はいつもここ。


古い石造りのおうちの真ん中の



大きな暖炉の前だ。





ここは家の中で一番暖かい。


それに大好きな彼女の横だ。


それにここには大切な想い出もあるから、好きなのだ。




わたしは一日の多くをここで過ごす。



火の暖かさに、薪のにおい、木張り床に敷いた絨毯の柔らかさ。
そして彼女の鼻唄・・・




そんな空気に包まれて、わたしはいつも眠りに落ちる。






彼女の朝は、とても早い。



毎朝、窓際に飾る花にお水をあげるらしい。



らしい、というのはわたしはまだ見たことがないから。




わたしを起こすのは
パンの焼ける香ばしい香り。




「今日のジャムは、きのう取ったイチゴで作ったの」




彼女は上機嫌に話す。




そうか、イチゴの匂いもあったのか・・・



近ごろ鼻が悪いのかな?



よわいにおいを感じにくいのだ。





「はい、出来たよ。君のはこれ。」





お皿には、温かいミルクに木の実。



わたしの朝食メニューは
温かいミルクと、庭で採れた美味しいなにかだ。



そして彼女はお昼まで、庭の花に水をやり
植えたイチゴやラズベリーを採り、草を取る。




彼女が庭に植えた実は、酸っぱくて食べれたものじゃないのに



彼女のナベに入ると、たちまち美味しいなにかになる。



まるで魔法使いだ。





そしてご飯を食べたら


お昼からは街へと旅立ったり


雨なら本を読んだり


わたしと違う場所でお昼寝をしたりする。



夜になると、わたしの横に座って
毛糸で服を編む。



そして
火の暖かさと、彼女の鼻唄に誘われて
わたしは眠りに落ちる。



彼女と出会ったのは、寒い日だった。



親とはぐれ、お腹もすいて、動けなくなった。



冷たい石畳の街、夜の帳もおりはじめ・・・



眠たくなってきて、めを閉じると

ふわりと暖かくなった。




ああ、きっとこれが天国って言うのかな・・・




重たいまぶたをあけてみると、そこにあったのは


一面の花だった。




ああ、やっぱり天国・・・


でも妙に揺れる・・・




いきなり光が指してきた。


その光の穴へ
一本づつ花は落ちていき、落ちた花は遠ざかっていく。



これはなんだろう、不思議な天国もあるもんだ。



聞こえるのは、誰かの声と、足音。


声の方を向いてみれば



「大丈夫、大丈夫だから!もう少し、もう少しがんばって!」


とわたしに声をかける女性の顔。



これが彼女との出会いだ。







どうやら彼女は街に花を買いに来ていたらしい。




その帰り道、わたしを見つけた。



花を包んだ毛布にわたしも包んで走ったらしい。



助けたい一身で、家に着いた頃には包んだ花は一本も残っていなかったという。





彼女はわたしを介抱してくれた。



体を暖め、のどを通りやすいミルクを飲ませてくれた・・・



そしてわたしが目覚めると、ここだった。



彼女の鼻唄で目が覚めたのだ。




体が揺れている・・・



長椅子に、灯・・・



毛糸を編んでいる手が見える・・・





「おや?目が覚めたかい?」




そこは彼女のひざのうえだった。




わたしの名前は
あの日買った花の名前になった。



「花を買いに行ったら、君に出逢えたんだからね」


と言って。



それは彼に先立たれて久しく、一人で暮らしていた彼女の元に現れた客人だったのだ。


そしてわたしは、彼女の家に住むことになった・・・




・・・



・・・・・・




穏やかな光にあてられて



まぶたをあけてみるとそこにあるのは暖炉の灯・・・




ゆっくりとゆれるからだ・・・



そして編み針をもつ彼女の手・・・




少し夢を見ていたらしい



彼女の鼻唄は、いつ聞いてもいい。



彼女の長椅子が揺れてきしむ音も、わたしに眠りを誘ってくる。



もう少し、もう少し、この火を見ながら暖まっていよう・・・
















想像してみてください。




庭先に大きなの樹がある日本家屋の


暖かい日差しの軒先に座り、お茶をすするおばあちゃん。





石造りの、北欧アンティークの家具の家


暖炉の前で猫をひざに乗せ、長椅子で毛糸を編むおばあちゃん。






その人物はどんな人柄の人だと想いますか?





きっとあなたが想像したのは・・・



優しく柔らかく微笑む、穏やかな人だと想います。







わたしはそのおばあちゃん達に、心の家に住んでもらっています。


 


そして何か困ったとき、行動したい時は




彼女に相談します。






不思議と、力をもらえるんです。





そして、私もそうありたいと想うんです。