花チャンネル

日々、私の中から生まれる詩、言葉を綴っています。

友達とお酒

私は普段、お酒を飲みません。


飲むのは月に一回くらいでする友達との飲み会だけ。


お酒は好き、みんなと飲むお酒はもっと好き。
だから楽しみのために取っておくの。


そんな私の部屋には1個だけお酒が置いてある。


何年も寝かせておくと、とても美味しくなるのだそう。


この綺麗なガラスのボトルを見ると、彼女を思い出す。

私の大切な友達の事を。




彼女はとてもお酒が大好き。


休日になると全国の酒蔵に足を伸ばして、そこの杜氏さんとおしゃべりしながら試飲するのが趣味の子。


「出回っていないからこそ、見つけたくなる!!宝探しだね!」

と目をキラキラさせながらおしゃべりする彼女が大好きで。



1度だけ彼女の部屋にあがらせてもらった時、そのコレクションにびっくりした。



ガラス張りの棚にたくさんの綺麗なボトルが並べられてて


「前は海外に行ってたけど、さすがにお金がかかるから今は国内なんだよ~(笑)」
なんて笑ってたっけ。




そんな彼女からある日連絡があった。




「最近はね、なにを飲んでも美味しくなくてさ。でも飲むのがやめられなくてね。」と言ってて



当時なんの知識も無かった私は
「それはそうだよ!美味しいお酒は、みんなと飲むから美味しいんだよ。飲みたいなら誘って!」



と返事をした。




月1回集まる友達たちもおんなじ事を言ってて。



それから飲み会は
月に2回、週に1回、多いときは週に2回、3回と増えていった。



「さすがに変だ。何かおかしい。」と私も気付き始めた。



「ねぇ普段は誰と飲んでるの?」と聞くと
「一人だよ、寂しくて。」と。



その日の夜、その子が帰った後、作戦会議が始まった。



酔ってなんていられない。



「あの子、お酒に溺れ始めてるよ。」
「聞いた事ある。アルコール依存症って言うんでしょ?」
「私たちになにができるかな」



その会議は朝まで続いた。



結論が出た。




「あの子の生活から、お酒を遠ざける」



あの棚の宝ものたちは、私たちの家に置く。




「寂しくて飲みたくなったら、私の家においで。一人飲み禁止!」



という分かりやすい作戦だ。



私が預かったのは、
「飲めるようになるまで10年、美味しくなるまで20年。それまで栓を開けてはダメ」
という海外のお酒だった。




あれから10年経った。



彼女は今、2人の可愛い男の子と優しいパートナーさんと仲良く暮らしている。



「忙しすぎて、お酒どころじゃないよ(笑)」
とのこと。



あの時
彼女はからっぽになった棚をみて
自分とお酒の関係に気付き
自分の足で病院へ行った。



「あの時は生きるのに必死だったからね。まぁ今の方が大変だよ!双子だし」
と彼女は豪快に笑う。



あの時預かったお酒は今でも私たちの家に置いてある。



「今は飲んでないけど、待っててね。美味しくなるまであと10年、しっかり寝かせておいてよ。」



その約束を守るために、今日もこの綺麗なボトルの宝物はガラスのケースの中で眠っている。







依存症と聞くと
「ゲーム」「お酒」「お薬」
いろんなものを想像すると思います。



私の中で、依存症というのは
「それがないと生きていけない」と思うこと。

裏返せば
「それさえあれば生きていける」ということ。



過酷な環境に置かれた時に
「これさえあれば生きていける!!」
と思う事は、自然のすごい生存戦略だと思うんです。



かく言う私もいろんなものに依存しています。
「温かいご飯」に
「暖かいお風呂にお布団」
「毎日一緒にテレビみて笑える家族」
「一ヶ月に1回遊ぶ友達たち」

そして私の部屋にある
「友達の宝物」


ほんとに、これがないと生きていけません(笑)


依存症の患者さんと聞くと
「暴れる」
「手に入れるためになんでもする」
「怖い」
とみんなイメージしているみたいです。




違うよ。
私たちがたくさん持っている宝物が、
「これがあれば生きていける!」
と想うものが
一つしか見えていない人なんです。




先日
アルコール依存症から学んだ事」を書いた本を読んでいて
ぶわーっと出てきた想いを書き綴りました。